2023年10月17日火曜日

ウェルカムトゥダリ

 先日、恵比寿ガーデンプレイスの三越跡地にできた施設を見に、そちらに行ったときに、隣にあるユナイテッドシネマで上映しているものをちらっと見たところ、ダリの自伝的映画が上映されていたので、興味をもったものだった。


アート関係の興味から、この作品をみることにしたのだが、作品については殆どふれられておらず、まさにダリ本人の生涯を描いた映画であった。

妻のガラは、ダリの才能をいち早く認めた一人であるが、いわゆる強烈な鬼嫁というのか、馬車馬のようにダリを働かせ、遊ぶ金やぜいたくなものを買う金を作るためにも作品を作らせようとしている。

ダリは自分が常に「ダリ」でいないといけないと思っていて、鬼嫁のガラに叱咤激励されないと作品が書けないという状態であったようだ。ダリの絵は素敵であると思うが、絵の生みの苦しみは半端ではなく、才能を絞り出すような感じであったのだろうか。そして、仕事に取り掛からない時間は酒池肉林のようなパーティを開催し、浪費も激しく生活は夫婦ともに乱れていた。

夫婦どちらにもだが、「老い」への恐れが感じられ、それをいやだと思いながら否定する姿勢も描かれていた。
ガラは若いミュージシャンを囲って資金援助をしてやったりと、やりたい放題を続けるが、ある時に若い秘書に、そのことをダリに暴露されて大変なことになる。

矛盾を抱えるほど大変になっていくのだが、そういう夫婦は時折いるかもしれない。半分わかっていたことかもしれないが、表面化してはいけない事実、というものがあるのだということ。無茶をしながらでも続けないといけないライフスタイル。そういった問題を抱えながら、この夫婦は生きてきた。本当だが言ってはいけないこと。若い者ほどそういうのがわからないし、真面目に黒白をつけたがり、暴露してしまうのだ。

スペインの片田舎への転居後、ガラが死去し、ダリも年老いて入院した。強烈な個性を持つ二人であったが、命は限りがあり、派手な生活も一時の花火のようなものだなという、人生のはかなさのようなものが感じられた。