2021年2月12日金曜日

Z 見えない友達(2019年カナダ)

 

大人には見えず、子供にだけ見える、友人Zの姿を絵にしたもの。

映画的には良く作られているが、ネタとしては、ちょっと子供だましな感じもしなくもない。欧米によくありがちな、怪物の話であり、お化け屋敷感の強い作品になっている。

子供の想像によってつくられたとばかり思っていたZ、ところがそれは母親が子供時代に友達だったモンスター、Zであり、また母親の元に戻ろうとしていたということ。

ところどころに恐怖をあおるシーンがあり、母親が風呂場でZを一目見ようと瞑想した結果、おそろしい顔の化け物が目の前に現れたり、父親に襲い掛かる化け物の恐ろしい顔がどアップで画面に映し出されたりと、その場でびっくりする怖さはあるが、瞬間的な怖さで、とてもカラッとしている。

そのため、あまり心理的なインパクトはない。映画として心に残るものとしたらやはり、風景や情景などが視覚的に大きな印象を受けるようなものだったり、音楽などが印象的だったり、人類全体に波及するレベルの出来事だとか、近未来を予感させるもの、とか、自分をとりまく世界観を刺激するものの方が残りやすい感じである。(演出だの俳優だの、といった要素もなくはないが、まわりとの調和や、とても個人的な不確実要素で好き嫌いも起きてしまうため、やや要素としては弱くなる。)

2021年2月10日水曜日

怖い本(2019年アメリカ・カナダ)

 


誰も住んでいないある古い家で昔、家族に拷問を受け、その後死亡した少女が怨霊となり、本に予言を書き続けていくという話。

トウモロコシ畑に建てられた、案山子のハロルドの顔は大変不気味なうえにゴキブリがたくさんはい回り、冒頭からの雰囲気を出す演出が良くできている。呪われた予言により、町の不良少年が案山子に変身させられてしまったり、他にも化け物に追いかけられた挙句、連れ去られたり、取り込まれてしまったりと、次々に失踪していく。

お化けの出現シーンがどれもそれなりに良くできている。呪われた本を返しに行っても家に戻るとそれが戻ってきてしまっていたり、赤い部屋を避けたつもりが、警報アラートの発動によって赤いランプで照らされた赤い部屋になってしまい、予言の通りになってオバケがでてきてしまうなど、逃げても逃げられないという怖さがある。

最後に結局、怨霊となった女の子の霊をなだめ、真実を書くと約束して本にそれをつづることで、一件落着する。失踪した友人たちが戻ってきていないので、続編ができて助けられる展開もあるかもしれない。


2021年2月8日月曜日

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢(2018年仏・ベルギー)

たった一人の男が、33年の年月をかけ、水、石灰を練り上げ、ハリガネや貝、拾ってきた石、いろんな素材を混ぜて手作りで理想宮を造った。正面の三体の像は、ずいぶん昔から見た記憶があったが、それだけ有名な建築だったのだろう。

 人間関係に不器用で寡黙、毎日黙々と仕事をしていた郵便配達員が、ある日、自分の心に浮かび上がってきた理想宮を創ることを思い立った。

またもや発達障害の話をしてしまうが、おそらくこの人はアスペルガー症であり、あれこれと手を回したり気を回すことが困難な代わりに、一つ思い立ったことは、誰になんと言われようが成し遂げようとする、周りの環境に左右されることなく、気違いと言われようが変わることのできない遂行力をもった人だと思った。

周囲の気持ちをおもんばかったり、協調したり、悪いからと自分のやり方を見直したり、融通の利いた行動、それができるのは普通の人である。が、それ故に、自分がこうだと思って最後までやり抜こうとする独自の道は築きにくい。主人公は周りに合わせることができないからこそ、自分の理想宮を最後まで造り抜くことができたのだと思う。

娘が抱っこしてほしいと言っても応えられなかったり、妻のリアクションを即受け入れられずに困惑してしまったり、多くの人の気持ちをくむ言動がことごとくできなかったりしている。(他者との接触が苦手で今風に言うと、いわゆるコミュ障、コミュニケーション障害のことである。)

それでもこの人が恵まれていたと思えたのは、理解者となってくれる妻を得られ、若くして亡くなった娘がくれた原動力を胸に建築をすすめ、生き別れた息子も近所に戻ってきて孫たちにも恵まれたからである。奇人変人ではあったものの、愛情というものが彼の心の中にきちんとあって、それを家族が理解できたということは、とても良かったと思う。

狭い日本と違って100年以上前のフランス、土地もいっぱいありそうなので、敷地があれば好きなものも建てられそうだったのがうらやましい。現代の日本だと、生活圏の土地はせまく、また、建築基準法があったりで、違法建築として取り締まられてしまいそうだから、とてもこんなものは建てられないと、ロマンのない現実的なことを考えてしまう。

が、100年以上前に建てられたこの建築物はとても素晴らしい様子なので、いつの日にか、見物に行かれたら良いと思う。

2021年2月5日金曜日

悪魔の発明(1959年チェコ)

 

映画は白黒で、個人的には退屈感を催してしまうところがマイナスポイント。

海底二万里・地底旅行・月世界探検などで有名なジュール・ベルヌを尊敬していると言われるカレル・ゼマンの監督作品。海底で水が揺らぐ画像は美しく、雰囲気がとてもよく出ているが、想像力をかきたてるための色が、残念なことに白黒なため、いまいち伝わり方が弱く、みているうちに眠くなってきたので、倍速を入れながらがんばって勢いでなんとか最後まで観た。

バカ正直で、善悪にはかなり疎い教授が原子爆弾らしき大型ミサイルを発明。教授を身柄拘束した海賊らが、それを悪用しようとしたが、途中で悪行に気づいた教授が爆弾を海に破棄して一難を免れる、というストーリー。中近世絵画を連想させるような絵柄を交えながらの画像が美しい。

白黒のためとにかく眠気を誘う中、部分部分ではあるが、海賊らが教授の屋敷まで荒波を超えて手漕ぎボートでやってくるシーンが、なんだかギャグっぽいというか、シュールな映像で印象的だったと感じた。

2021年2月4日木曜日

ロンドンゾンビ紀行(2012年 イギリス)

老人ホームの年寄りたちも武器を手に活躍する、明るく楽しいサバイバル映画。

定職につかずお金がカツカツの兄弟、ギャングにも知り合いがいてなんとなくあやしい生活を送っている感じだが、老人ホームを経営する祖父の手伝いをするなどの優しい面もある。

発端はめちゃくちゃ感がすごく、工事で掘り起こした古い墓地に埋まっていた、土葬ではない腐った遺体や骸骨にかみつかれ、ゾンビに変身した作業員。そこから市中にゾンビ感染が広がっていった、という話。

祖父のホームを消滅から救おうと、銀行でお金を受け取ろうとして図らずしてギャングの友人のせいで強盗を働いてしまったが、結局金銭面でもゾンビ包囲網からの救出でも祖父を助ける兄弟。

ギャングの腕にかみついたゾンビの顔が吹き飛んで、顎だけになったままかみついていたり、かまれてゾンビになってしまったギャングに、手りゅう弾を食わせて吹き飛ばすシーンなど、他にもいろんな場面に笑いとユーモアをちりばめている。ストーリー的には大した壮大さはないが、スタンダードなゾンビにスタンダードな戦闘、ユーモア、助け合いや家族愛を交えた展開で、殺伐感はなく、ハッピー感のある見やすい仕上がりとなっている。