NHKをつけっぱなしにしていると、ときどき連続ドラマが流れたりしている中、新たに開始する連ドラは、小泉八雲とその奥さんを描いたもの(「ばけばけ」)がスタートするようであった。
小泉八雲の怪談は、小さい時から父が本を見せてくれたり読み聞かせしてくれたことがあったので、なじみはあった。耳なし芳一などもそうだが、むじな、雪女なども有名な作品である。
ネットでどんな作品があったかな、くらいに見ていたらこちらの映画にたどりついたが、60年も前の映画だと、ちょっと感覚がずれてしまって見づらいかなという懸念はあった。物語の進行は、ゆっくりゆったりしていたのでテンポの違いを感じたが、なんとか最後までみることができた。映像は美しかったと思う。
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オムニバス形式で、若き日の岸恵子、三國連太郎、仲代達矢、中村 嘉葎雄、丹波哲郎らが出演している。 |
父の本で好きだった話に「和解」というのがあり、最後は一人となった夫が、苔むした家の跡地にたたずむ、といった結末だったと思ったのだが、こちらの映画だとかなり脚色されている。おいて出て行った妻(亡霊)に昔の家で会う、までは一緒だったのだが、なんと、妻の呪いがあり、それに取りつかれて夫も狂い死にするという脚色がされてあった。寂しい、悲しい余韻がこの物語の味わいどころだと思っているのだが、最後に夫が取り殺されてしまうという映画での結末は微妙だった。
また、耳なし芳一の話は、映画だと最後に芳一の琵琶の才能のことが世間に広まり、いろんな人に演奏することで芳一は大金持ちになった、などの結びがあるので、時間の引き延ばしのためなのかもしれないが、なんやらどうでもよい結末であった。原作の方は、最後に耳を引きちぎられるシーンで終わっていたと思うし、こちらのほうが怖さの余韻があると思うのだが。
映画での演出でそこそこ面白いと思ったのは「茶碗の中」であった。原作者が物語の途中で筆を止めてしまい、話がぷっつりと途切れた理由が映画の最後にわかる。作者も茶碗の中に吸い込まれてしまい、水に映る影となってしまったからであった。
製作費が数億円かかっているということであったが、映画のセットや建造物がとてもゆったりとした造りで、色合いは昔なので地味ながらも、映像は美しいと感じられた。