2023年1月5日木曜日

30デイズナイト アポカリプス(2012年)

 


 ヴァンパイアホラー「30デイズナイト」の前日譚という設定の話ということである。物語的にはあまり面白味は感じられなかったが、ヴァンパイアに一度家を見つけられてしまうと、そこまで追ってきた襲ってくるということであり、やっかいな相手である。

 ヴァンパイアたちに関する悪事を暴露できるデータをしまった金庫の暗証番号が入れ墨されているために、彼らに追われ続ける男。彼を殺人犯だと誤認識する警官に逮捕され、移送の途中で彼らの襲撃を受ける。

 設定的にはデータを守るという現代的な設定であるが、人々がヴァンパイアの存在に気づかず、追われ続けている男がすべての殺人事件の犯人だと思い込むのは、ゾンビ映画黎明期のような感じの、人々の「そんなことはありえない」という思考とほぼ同じであった。いわゆる正常性バイアスのかかった人たちを、大災難が裏切っていくというストーリー展開だが、流れを知っている側から見ると、イライラしそうになる。

 男の収監されていた警察署に勤務する女性もとばっちりを食ってヴァンパイアに感染してしまうが、その行方を追う元刑事の兄が男と行動をともにしながら妹を探していく。変身しつつも理性の残る妹は、日光に当たって自死した。そして襲撃してきたヴァンパイアは殲滅できたかに思えたが、ラストでヴァンパイア変身した男を、元刑事が撃つというラストだった。

2023年1月2日月曜日

モンストラム 消失世界(2019年)

 


いわゆるワームホールをテーマとした話で、そこをくぐったと思われるハイジャックされたバスの中で、乗客全員が記憶喪失となって別世界に放り込まれた話。

最初の竜巻で、なぜかバスから降りて猛ダッシュで逃げ出す乗客たち。が、嵐の中の鋭いかまいたち?に襲われて大勢死亡。残されたハイジャック犯たち、乗客、刑事、8歳の少女とで記憶をなくしたまま異世界をさまよう。

CG作成の不細工な怪物に追い掛け回されながら、キャンプに逃げ込むと、残された日誌により、そこが異世界だということに気づき、ワームホールで帰還できるかもしれないことがわかった。

ハイジャック犯たちは、記憶喪失前は悪い人間であったが、一人の少女を助けるために全員が「パパ」となって良い人になるという一面もあった。自分勝手なエゴをそれぞれ振り回した行動をとろうとするも、少女を助けたいという気持ちによって結束はあったようである。

少女はこの話で皆をまとめるという重要どころであったが、何せ衝動的過ぎて、大人の言うことは聞かずに自分の感情で勝手な行動をとりまくり、非常に扱いづらくやっかいな性格であったが、本当にこんな子供がいたらまさにADHDを疑うレベルであった。

火星へはワームホールで飛べるという説や、怪物がいるという説もあるようだが、もしかするとこれは、一時の火星旅行だっただろうか。

背景は、終わりのない砂漠世界なので、ある意味、楳図かずお原作の「漂流教室」(1987年)の世界を少しほうふつとさせる世界観であった。





未来世界(1976年アメリカ)

 


1973年の映画「ウェストワールド」の続編で、ロボットたちが支配するレジャー施設を舞台に、主人公とパートナーが陰謀に巻き込まれる話。

前作のウェストワールドでは、AIを持ったロボットの反乱により、レジャー施設が殺戮の舞台と化してしまったというあらすじだが、本作では、施設の運営者も本物と入れ替わって人間を排除しようということをたくらみ、事実を暴こうとした者たちを殺戮し、そっくりに作ったロボットに置き換えようとしていた。

施設はお好みで選べる宇宙・中世・ウェスタン・・などがあったが、VIPたちだけを招待するほどの施設かどうかはやや疑問であった(当時の映画としては目新しい?)が、あらすじ的には悪くないので、リメイクの余地はありそうである。

ただ、精巧に作られた人型AIも実用化できそうな昨今の技術進歩の様子、話が現実的すぎる感もあって、なんとなく怖い。


2022年12月30日金曜日

ゾンビ・バスターズ(2010年 アメリカ)

 


いわゆるゾンビものB級映画で、バスターというほど殺しまくる感じは出ていない。

ある研究所で死んだ妻を生き返らせるために研究した博士により、妻がゾンビとして生き返り、そもそもの発端になった。妻は死んでから数カ月もたっているのに、普通の人(色つやが良すぎる)がただ寝ているだけ感、という不思議感。いろいろ適当な部分があって突っ込みどころが満載であった。

車の運転もラフすぎて、踏まなくてもよい障害物をわざわざ踏んでのパンク。車を降りてゾンビに襲われるのだが、助けてくれた保安官の車でも不思議事象。車の窓が、一般のガラスのようにガシャーンといって割れ、ゾンビにつかまった保安官もそうっとおろされるかのような引きずり落され方をするし、演出がいちいち不自然であった。

その後主人公がたどり着いた住居のようなものが、1階がぼろぼろの崩れそうな掘立小屋状態で2階部分はきれいにしっくい?で整えられた一般家屋。上階と1階の状態の落差がひどく、1階は木の板数本で壁ができており、すぐにゾンビたちにやぶられそうなひどさ。二階はきれいでふんわりしたベッドもあり、まったく不思議家屋である。

その家屋にいた男女は、主人公以外に荒くれ者のニール、連れの女性、女性姉妹二名と男性1名。あとから、不時着のヘリからの男性兵士1名。兵士から、この地域一帯は爆撃で一掃されるということをきいて、車で脱出しようにもガソリンがないため、2.5km離れた隣町に調達に行く。ゾンビからかくれるために夜の決行であった。作戦中、ニールがたばこが吸いたいために余計な音をだしてゾンビらをひきつけてしまい、主人公の足を引っ張るのもいかにもである。

滞在中のゾンビからの襲撃により、かまれた女性がゾンビ化、ニールもやられてゾンビ化。具合が悪い、怪物になりたくないと言っているのにかたくなにそうはならない、と全否定したあげく、やられるニールのバカさ加減もこういう映画のデフォかもしれない。

ライフルを手にゾンビをうち、仲間のゾンビ化した男性を撃って落ち込み、家屋内で姉が亡くなり、はげしく落ち込む妹。が、ひどく落ち込んだ割には次のシーンでは、テキパキと脱出のための板はがしを手伝い、なんやら切り替えが異常な速さであり、やはり演出が変な感じである。その激しい落ち込みの演出は、かえっていらないかと思われる。

ガソリンを入れてやっと走り出した車の中で、生き残った主人公とにっこり見つめあう妹。なんか不必要な雰囲気が流れて、えっ、このタイミングでその演出?いらないのではないかと思わせてくる。

とまあ、いろいろ変な感じがしたり、いらない会話や空気感や演出でぐだついたりはしている。が、B級ゾンビ映画に出てくるテンプレ的なシチュエーションは満載されている。(発端の出来事、籠城、仲間のゾンビ化や襲撃、爆撃、煙を上げている都市部など)



2022年12月27日火曜日

マスターズオブホラー(2018年)


数編のオムニバスによって構成されている物語集。それぞれが、とある怪しい映画館を訪れた個々の人々が主人公となる映画を見させられ、奇妙な世界が展開していく。

1.宇宙から飛来した隕石から出てきた宇宙グモ。それらに寄生される人たち、それを殺してなんとか侵略を防ごうとする者。/ 2.悪魔の乗り移った少年、それが、女性、シスターへと乗り移り続け、その間に人々を惨殺していく恐怖。/  3.婚約者に勧められた整形外科医でおそろしくおぞましい姿に整形させられた女性。/  4.時間の経過とともに、自分を取り巻く環境と人間が、自分と子供以外、醜くおぞましく変化していってしまう恐怖におののく女性。/  5.殺人鬼に両親を殺され、自身も死にかけた少年が、死んだ人が見えるようになり、入院先の病院でいろいろな体験をする話。

5番以外、すべて怪しい映画館の主人(怪優・ミッキーローク演)によって映画を観終わった直後に殺され、幽霊となって少年の前にたちはだかったが、少年は映画館を後にして脱出する。ミッキーロークの、狡猾で、ねちっこい雰囲気のあふれる怪人も、非常に印象深かった。

ストーリー的には、4番の物語がホラー的に好きである。ふっと時間の経過に気づいたとき、目の前の人が、血に汚れた衣服をまとい、顔のゆがんだ人物に変化している。廊下なども異世界のように、血なのか汚れなのかわからないが、いたるところに液状の汚れがついておどろおどろしく変化しているというショック。不思議な世界の部分は白黒であるが、そこが、物語の暗さや、いっそうの想像力をかきたて、カラーよりも味わい深くなる感じがする。

また3番に出てくる整形外科医、あまり見ない顔なのに、きっと有名な俳優だろうという印象がぬぐえなかったが、あとでわかったのが、1980年のドラマ「将軍」のDVDで見た三浦按針を演じたリチャード・チェンバレンであった。



2022年12月4日日曜日

サバイバルファミリー

 


太陽の磁気嵐のせいだろうか、ある日突然、電気が止まり、電化製品もうごかなくなって、車も電車も動かず、水も断水になってしまった。トイレも流れなくなり、スーパーも品切れとなり、数日たってから主人公家族たちは無謀にも、東京から鹿児島に住む父親を訪ねることにした。(計画性がいまいち)いっそ、近くの海を目指したほうが良かったのかも?しれない。

 移動を決めた以上、自転車を見かけて購入したまでは良かったが、車も電車も動かないという時点で、なぜ飛行機も飛ばないということを想定しなかったのだろうか。そこからまず、残念すぎる感じがする。結局乗れないまま飛行場を後にし、なんとかホームセンターでペットフードや精製水、地図を入手するが、やはりそのあとも食料も水も底をつき、飢えて歩いた。水族館の魚を調理しての炊き出しも盛況となっていたが、たどり着いたときは品切れとなってしまった。そして、見かけた農家の豚を食べようと襲い掛かって失敗する。(当てがなさ過ぎて危なっかしい)

幸運にも農家の主人に食事を与えられ、仕事も与えられて信頼関係を結ぶが、やはり父が心配なために、そこを後にする。自給自足のような、その時は理想的とも思えた生活、ひきとめてくれたのにそこを出たのはやはり無謀な気がする。(チャンスを逃す)

橋がなくなっていたためにいかだを作り、川渡りを試みるも、自転車4台をあせって運ぼうとした結果、いかだがこわれて父が川に流される。(不運)

残った三人はの道を行く途中で野犬化した飼い犬たちにもらっていた食料をねらわれ、襲われそうになったところを蒸気機関車に助けられた。(不運と幸運)

意識を取り戻して道端に出たお父さんも、運よく機関車に発見され、救出される。(溺死しなかったのも、見つけてもらえたのも、映画だからうまくいくこと)

機関車で鹿児島に近づけたようであり、ようやく鹿児島の海で父親と再会。(そんなにうまくいくはずはないような気がする)

おそらく現実には、この家族と同じことをしようとすると、途中で野垂れ死にするような気がする。なぜかというと、移動の手段は徒歩のみになるとどれだけ時間がかかるかわからない上に、食料・水・寝床もなかったり、熱中症になったり逆に、凍え死ぬこともありえる。全世界的な事象で起きていて、誰もが他人を助けることが難しくなってしまっているのである。

いたずらに移動しても死ぬし、水・食料もないまま家に閉じこもっていても、どのみち死んでしまうという厳しい現実が見え隠れしてしまい、コメディ映画でもあるのだろうが、現実化すると、やはりこれは怖いなと思う。


2022年12月1日木曜日

ドント・ウォーリー・ダーリン を観てきました

 


旦那とはラブラブで、何の不足もない平穏な毎日、素敵なマイホームと一見申し分のないような生活を送っている主人公と周辺住民。ところが、時折フラッシュバックする断片的な記憶、何かがおかしいと相談を持ち掛けていた友人の自殺など、主人公女性も自分のいる世界に疑問を持つようになる。

あるとき、飛行機事故を見かけて「本部」を訪れたことから主人公の猜疑心はどんどん深まっていき、そこが作られたバーチャル世界だということにたどり着いた。

それをわかっていて世界にとどまる知人もいた。現実には子供はいないが、ここにいればそれがいて、守るべきもののために私は生きていける、といったことを言っていた。そして彼女は、主人公は行動を起こしてしまった以上、ここにいるとつかまるから逃げなさいと助言をくれた。

現実では職に困っていた恋人が、自分の許可も得ずに勝手に自分をバーチャル世界に連れてきてしまったことを知った。夫婦仲の良さ・すばらしい家、一見理想的な世界でのことが(毎日同じループなのを見ていると、なぜか見ている方がうんざりしてくる)、自分勝手な恋人によるものだと知ったとたん、身の毛もよだつような嫌悪感に変わってしまった。

バーチャルリアルティ空間の普及が予想される昨今であるが、その中で描かれた映画である。 作られた空間にだまされ、現実の記憶を失い、何者かに支配されながらも何かがおかしいと感じながら生き、逃げ場もない場所。映画「マトリックス」的なエッセンスも感じさせられる。日本のアニメで言うと、すでに40年も前のものだが、「うる星やつら」の映画「ビューティフル・ドリーマー」あたりだろうか。

何かがおかしい、ということに気づきさえしなければ、閉鎖空間の中ではあっても、これほどまで苦しむことはなかっただろう。が、気づいてしまったからにはこれに抗い、戦わなければいけないという苦しさ。これは一種のディストピアストーリーだとも思える。

周りに自分の考えを全否定された挙句、耐えきれなくなって自殺する人。気づいてはいても、あえてそれを受け入れ、安住する人。主人公の場合は、執拗に自分を阻止する旦那を結果的に殺害し(現実世界でも死亡するようである)、本当の世界にどうにか逃げ戻る、というラストだった。どれも自分の行った選択であり、それによって大きく結果も変わってきている。が、逃げ戻った世界は、本当の現実世界だっただろうか。

この現実世界も、仮想空間であるという説(二重スリットの実験より)もあるようである。だから、現実と思われている世界も実は、定まった形があるのではなく、みんなのとらえ方や気持ちによって、あり方が変化しているのかもしれない、という話である。