2023年1月20日金曜日

レフト 恐怖物件 (2020年アメリカ)

 


1984年映画「フットルース」でメジャーデビューして以降、いろんな作品に出演しているケビン・ベーコンの主演だが、悪役やひとくせある配役を演じているのも多く、またそれが似合っていたりする。

人相を見ると、シャープな顔立ちの中に、他人を寄せ付けないような、どこか違うところを見ているような目を感じ、そこがぞっとする感じがしてきそうで、名悪役としても光るものがある。態度は紳士的であっても野生動物のような眼光の目が「うるせえな!」と言わんばかりに語っている感じがするのである。写真によってなのだが、人とは違う、深い深いところをじっと見ており、そこに攻撃性が加わると、とてつもない恐ろしい役どころに変身する。ある意味ものすごい個性である。(カバー写真のケビンの表情も、亡霊にひきこまれるような感じがあって良い。)

さておき、映画の感想を先読みしたところ、ケビン・ベーコンが年取りすぎで奥さんと不釣り合いだ、だのいろいろ書かれていたが、たしかに還暦を迎えた人に対してそんなのは当然だという感想であるが、それはおいておいて、個人的には雰囲気の好きな映画であった。

風景や背景の美しさ・家の内部の美しさがあり、問題物件でなければ住みたい感じの家だと思わせる。ケビンの露骨な怒りの表情も、いやな感じが出ていて名演である。どなったり暴れたりなどの乱暴な態度をとるわけではないが、怒りに震える感じがものすごく伝わってくる。奥さんの「陰湿な怒り方」という表現が、言い得て妙だった。

数々の悪夢、幻視などをみさせられ、不気味な体験が続いたために脱出することにしたが、歩いて坂を下っても元の家に帰ってきてしまう。バカンス的な使用目的で借りた家が、悪魔が魂を集めている家だということがラストでわかったが、どうしても彼は、そこから脱出できなかった。それは、前の奥さんを、積もり積もった怒りの感情に負けて見殺しにした(奥さんが泥酔し、浴槽で溺死するのを見ていた)ことへの罪の重さを感じ、出ることができなくなってしまったものだと思われる。

結局、奥さんと子供だけ車でそこを離れ、彼はそのまま残った。やがてその家はまた、「入居可能」という表示になったが(ネット上)、彼は家に吸収され、その中でさまよう霊魂となってしまったようであり、再び家は、次の魂を探し続けていく、というしめくくりとなったようだった。