2022年7月14日木曜日

楽園追放(2014年 日本)アニメ映画

 

未来の地球。人類の多くは荒廃した地上を捨て、電脳世界ディーヴァで暮らすようになっていた。現実でも今、内閣府によって「ムーンショットとは人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会の実現」と、定義されているが・・。

人類の98%が移住しているといわれている「楽園」ディーヴァ。社会に貢献する程度によって、与えられるメモリの高低が区分され、生活の快適性に格差が生じているようである。

電脳世界の外に暮らす人も少数おり、100年以上前から誕生したAIもいて、進化を続けて人格を獲得したようであった。そのAIは、自分らしく生きることを存在理由としてあげ、電脳化する人々と逆を行く、対局的な存在であった。そして彼は、果てしない宇宙へ旅立つことを計画し、それを決行するのであった。

 キャラクターの絵柄はいかにもオタが好みそうなデザインの少女に、パートナーはヒゲを生やしたちょい悪おやじ風優男、といった感じで、はっきり言って好みではなかった。が、動画サイトでだったか、人々がやがて暮らすことを仮定した世界ではないかと言われるものの想像が描かれているようだったので、参考になるかはわからないが、垣間見てみようと思ったわけである。

 電脳ディーヴァは、完全に支配者によって管理され、実績を積むことでよりその中での生活が充実するというものだが、いったん反抗的だとみなされると、市民権をはく奪されて檻のようなところに収監されるという怖いところでもあった。歯向かわなければ安全な暮らしが待っているといえども、それすら支配者の意向によってどうにでも決められてしまうのは恐ろしい。

 一方、荒廃した現実世界の中で暮らす人たちは、物々交換もあったりと原始的で、こちらは生活力がないと即、死んでしまうような場所であったが、音楽があったり、食べ物の味があったり、人間らしいといえば人間らしい暮らしがあり、それを求める人たちが選ぶ場所なのだろうか。物質に縛られすぎても生きることが苦しくなりそうで、表面だけ見ていると、ディーヴァとどちらがいいのかわからない。

 そして第三の道が、AIが計画していた宇宙への冒険であった。宇宙船はいわゆる閉鎖空間であり、何かが嫌になっても外に逃げられない。そして、安全にどこかの地に着陸できるとも限らない。少なくとも宇宙船の内部がどのようになっていて、水・食糧・空気が確保され、運動スペースもあり、重力もできればあって、退屈もしのげるのか、したくはないが最悪安楽死もできるようにするなどはっきりしないと、乗り込む気になれない。

 この映画の中でどれを選択するかは、見ている人によるだろうが、現実世界で暮らしている以上、一番今のところ、現実世界への安心感はある。