2022年7月13日水曜日

パラドクス(2014年 メキシコ)

 

時間ループものの映画もあるが、こちらはある空間に閉じ込められて出られなくなるという話。

閉鎖空間はここでは4通り描かれるが、主に二つの空間が取り上げられている。

一つは、エレベーターの裏の階段の回廊。1~9階まであるが、その上下はやはり、同じ1~9階の空間が延々と続くだけである。警官と兄弟(兄は警官に撃たれた傷が元で間もなく死亡)がそこから出られなくなり、水と食料だけは無尽蔵に出現するため、35年間もそこでそのまま生きている。

もう一つは、母と継父、兄妹で旅行に出かけるが、ある区間がループして、そこから出られなくなる。(妹は、継父からもらったジュースのアレルギーで喘息の発作がひどくなり、やがて死亡。)こちらもガソリンスタンドから無尽蔵に水と食料が湧き出るため、飢えることなく35年間暮らし続けた。

その後、年老いた警官、年老いた継父が死ぬが、「エレベーターに乗るな」「パトカーに乗るな」と警告を発していた。

が、それを無視して回廊からエレベーターに乗った弟、彼は、そこに置いてあった制服を着ることでエレベーターボーイとなるが、ホテルの廊下という閉鎖空間へ迷い込む。

一方、パトカーを発見して乗り込んだ兄は、おいてあった服装に着替え、ひげをそり、警官に成り代わって回廊に迷い込むルートをとるのだった。

警告の意味はなく、そもそも彼らがそういう役割使命をもった、そういう存在なのかもしれない。というのは、話の中で、現実の世界の彼らもまたいて、そちらは幸福な暮らしを送っているが、彼らのために、自分たちはこのような生涯を送るのだ、という会話があったからである。

一つの考察だが、現実世界のために犠牲になる、というのはわからないが、パラレルワールドというとらえ方もあるかもしれない。同じ自分だが、無数の空間の中に無数にいて、それぞれが異なった状況の中にいる、という話もあるわけで、そのパラレルワールドの一つの話、ともとらえられる気はする。

が、映画の焦点としては、ループする空間に閉じ込められた絶望感がよく描かれているため、地獄だなあと感じられるのである。

時空系怪談というのもあり、とても近いまっすぐな道で、すぐに着くはずなのに、なぜかいつまでも到着しない、という話もある。きつねに化かされたとも言われるが、これはちょっと一服するなど気分転換をすると、その状態から解けるというのが一般的な話なので、こちらの映画よりは絶望感が少ない。