2021年2月8日月曜日

シュヴァルの理想宮 ある郵便配達員の夢(2018年仏・ベルギー)

たった一人の男が、33年の年月をかけ、水、石灰を練り上げ、ハリガネや貝、拾ってきた石、いろんな素材を混ぜて手作りで理想宮を造った。正面の三体の像は、ずいぶん昔から見た記憶があったが、それだけ有名な建築だったのだろう。

 人間関係に不器用で寡黙、毎日黙々と仕事をしていた郵便配達員が、ある日、自分の心に浮かび上がってきた理想宮を創ることを思い立った。

またもや発達障害の話をしてしまうが、おそらくこの人はアスペルガー症であり、あれこれと手を回したり気を回すことが困難な代わりに、一つ思い立ったことは、誰になんと言われようが成し遂げようとする、周りの環境に左右されることなく、気違いと言われようが変わることのできない遂行力をもった人だと思った。

周囲の気持ちをおもんばかったり、協調したり、悪いからと自分のやり方を見直したり、融通の利いた行動、それができるのは普通の人である。が、それ故に、自分がこうだと思って最後までやり抜こうとする独自の道は築きにくい。主人公は周りに合わせることができないからこそ、自分の理想宮を最後まで造り抜くことができたのだと思う。

娘が抱っこしてほしいと言っても応えられなかったり、妻のリアクションを即受け入れられずに困惑してしまったり、多くの人の気持ちをくむ言動がことごとくできなかったりしている。(他者との接触が苦手で今風に言うと、いわゆるコミュ障、コミュニケーション障害のことである。)

それでもこの人が恵まれていたと思えたのは、理解者となってくれる妻を得られ、若くして亡くなった娘がくれた原動力を胸に建築をすすめ、生き別れた息子も近所に戻ってきて孫たちにも恵まれたからである。奇人変人ではあったものの、愛情というものが彼の心の中にきちんとあって、それを家族が理解できたということは、とても良かったと思う。

狭い日本と違って100年以上前のフランス、土地もいっぱいありそうなので、敷地があれば好きなものも建てられそうだったのがうらやましい。現代の日本だと、生活圏の土地はせまく、また、建築基準法があったりで、違法建築として取り締まられてしまいそうだから、とてもこんなものは建てられないと、ロマンのない現実的なことを考えてしまう。

が、100年以上前に建てられたこの建築物はとても素晴らしい様子なので、いつの日にか、見物に行かれたら良いと思う。

2021年2月5日金曜日

悪魔の発明(1959年チェコ)

 

映画は白黒で、個人的には退屈感を催してしまうところがマイナスポイント。

海底二万里・地底旅行・月世界探検などで有名なジュール・ベルヌを尊敬していると言われるカレル・ゼマンの監督作品。海底で水が揺らぐ画像は美しく、雰囲気がとてもよく出ているが、想像力をかきたてるための色が、残念なことに白黒なため、いまいち伝わり方が弱く、みているうちに眠くなってきたので、倍速を入れながらがんばって勢いでなんとか最後まで観た。

バカ正直で、善悪にはかなり疎い教授が原子爆弾らしき大型ミサイルを発明。教授を身柄拘束した海賊らが、それを悪用しようとしたが、途中で悪行に気づいた教授が爆弾を海に破棄して一難を免れる、というストーリー。中近世絵画を連想させるような絵柄を交えながらの画像が美しい。

白黒のためとにかく眠気を誘う中、部分部分ではあるが、海賊らが教授の屋敷まで荒波を超えて手漕ぎボートでやってくるシーンが、なんだかギャグっぽいというか、シュールな映像で印象的だったと感じた。

2021年2月4日木曜日

ロンドンゾンビ紀行(2012年 イギリス)

老人ホームの年寄りたちも武器を手に活躍する、明るく楽しいサバイバル映画。

定職につかずお金がカツカツの兄弟、ギャングにも知り合いがいてなんとなくあやしい生活を送っている感じだが、老人ホームを経営する祖父の手伝いをするなどの優しい面もある。

発端はめちゃくちゃ感がすごく、工事で掘り起こした古い墓地に埋まっていた、土葬ではない腐った遺体や骸骨にかみつかれ、ゾンビに変身した作業員。そこから市中にゾンビ感染が広がっていった、という話。

祖父のホームを消滅から救おうと、銀行でお金を受け取ろうとして図らずしてギャングの友人のせいで強盗を働いてしまったが、結局金銭面でもゾンビ包囲網からの救出でも祖父を助ける兄弟。

ギャングの腕にかみついたゾンビの顔が吹き飛んで、顎だけになったままかみついていたり、かまれてゾンビになってしまったギャングに、手りゅう弾を食わせて吹き飛ばすシーンなど、他にもいろんな場面に笑いとユーモアをちりばめている。ストーリー的には大した壮大さはないが、スタンダードなゾンビにスタンダードな戦闘、ユーモア、助け合いや家族愛を交えた展開で、殺伐感はなく、ハッピー感のある見やすい仕上がりとなっている。


 

2021年1月31日日曜日

エリジウム(2013年アメリカ)

 


二極化、社会の分断、が叫ばれている現代、宇宙移民やメカと人体の融合、といった近現代SF要素を合わせて描いた作品である。

社会構造の変化のために、中間層がすっぱりと抜け落ち、貧民か超裕福な者どちらかしかいないのだろうか。貧民は地球に残され、超裕福な者はエリジウムという地球軌道を周回?する衛星に市民権を得て完全移民し、気候変動や病気から解放された素晴らしい生活環境に恵まれている。

地球に残ったものはみな貧しく、その日の生活に精いっぱいな様子であるが、そこにロボット・テクノロジー関係の会社を経営する社長が工場労働者をたくさん働かせている。犯罪を取り締まるのもAIがメインになっていて、ロボットもいたるところを歩いているのだが、完全に人々はそれらに管理されている。

自分たちや自分たちの社会を守ることにすべてをかけるエリジウムの管理者たちと、病気を治すテクノロジーを解放させたいと思う主人公、見ている者にはもちろん後者の応援をしたいと思わせるのである。

クレイジーズ(2010年アメリカ)

 

廃棄予定だった細菌兵器をのせた飛行機が墜落してしまったのは、ある小さな町の水源となっている沼の底だった。

ウィルスによって、飲み水から感染した人が狂いだす。目つきや態度が完全におかしくなって凶暴化し、殺人鬼に変貌する。(顔面充血や出血は多少あるものの、知能の残るゾンビ化)それは空気感染もし始めて、あっという間に街に蔓延してしまった。火消しを行うために軍が投入され、未感染の住民も含む全員皆殺しを行い、街へのミサイル投下により、証拠も住民も消滅させようとした。

ヒロイン役の女性は、映画「サイレント・ヒル」「サロゲート」にも出演していた方である。 ラストで街をなんとか夫と脱出して隣町へ逃亡するが、彼女はペットボトルの水を街で飲んでいるのだが、それが汚染されている可能性があるかのような演出があったこと。そして逃亡したものの、上空の監視衛星により、次の街も封鎖対象になってしまう、というオチになっていた。なんにしても、さらに一波乱ありそうなエンディングだった。

2021年1月30日土曜日

ディープ・インパクト2016

 

やはりこちらも、レンタル用DVD映画という感じである。

アメリカ・サウスダコタ州にあるラシュモア山に掘りつけられた4人の大統領の彫像は有名である。そのままコピーになるが、ジョージ・ワシントントーマス・ジェファーソンセオドア・ルーズベルトエイブラハム・リンカーンの頭部とのこと。


それが冒頭で落下した隕石によって、一人の顔が破壊されてしまうのが一番インパクトのあった部分であった。

政府のスパイ衛星を暴露したため?犯罪者扱いされるようになった主人公、やはり隕石群の異変にいち早く気づいてNASA?的な組織にハッキング・調査し、真実を暴く。そしてそれを阻止しようとする組織関係者の追跡から逃げまくり、最後に広場に置いてあるロケットに、塩酸??的なものを仕込んで発射すると、ぶつけた隕石が溶けてなくなり、ハッピーエンド、という大体のあらすじ。

なんでそうなるの?本当にそうなの?素人にはさっぱりわからないシステム的なことやら化学的なことやらをやたら織り交ぜ、まあ、そうだと言うんならそうなんでしょうが・・、という思いを残させながら、話は終わっている。隕石、溶けてしまった・・。さすがにこれは嘘くさすぎる、という感想と共に。


2021年1月28日木曜日

ワールド・オブZ

レンタルで見飛ばす部類のB級映画。アマゾンレビューを見てしまったら、★が1.5だった。

「キネマ旬報社」データベースより)

人類に下された破滅と終末を描くゾンビアクション。突如、正体不明のウイルスに侵された地球。狂暴化した感染者が蔓延る“キル・ゾーン”に残されたふたりの男は、隠れていた姉妹と出会い行動を共にする。彼らは逃げ惑う中で、ある事実に気付き…。

凶暴化人間、いわゆる全力疾走型ゾンビ、たちから逃亡する男女4人。そのうちの軍人に対して執拗に敵対する男も現れる。話がすすんでいくうちに、軍人は、人間を実験台にしてウィルスを使用する法案を不正な手段を使って成立させた、と死の間際に自ら語った。狂人が権力を握るととんでもないことをしでかすというのが現代社会に当てはまるのかもしれない?というブラックユーモアを暗示しているかのようである。

大量の武器を所有して武力に物を言わせながらアジトを奪取してゾンビを制圧。また追ってきたら次のアジトへ逃亡と、きりがない感じである。その背景には御託を並べないでとっとと戦え、といわんばかりの軍人の圧力が影響しているのだが、ドラマ性はやや低く、ゾンビ慣れもあるかもしれないが、それほど新鮮味はない。4人のうち二人の男女が死に、残りの二人でもって亡くなった軍人を弔って砂漠に逃れていくらしいラスト。やっぱりと思っていたらやっぱりだったが、ボートに載せられた軍人が、最後に目を開いた。目の開き方がソフトすぎて、あまりゾンビぽくなかったが。